新学期。手にした、新しく、ぴーんと張りつめた国語の教科書をひらいて、わくわくして読んだ昔。
その学年年齢にふさわしい作品が選ばれているからだろう。どの作品からも、文学のエッセンスがふわふわ漂ってきて、幼いながらにうっとりと読んだ。
教科書の日本の文学に触れつつ、学びつつ、子供の心に、日本人としてのアイデンティティが自ずと形成されていったような気がする。
しばらくは秋蝶仰ぐ爆心地 名取里美
この一句が、高等学校の国語教科書『精選言語文化』と『新編言語文化』に掲載された。令和4年から使用する教科書である。
ほんとうにびっくり、掲載は面映ゆい。
27歳のとき、はじめて訪れた長崎で詠んだ一句だった。清々しい青空がひろがる長崎の街を歩いた。
この句を句集『あかり』に掲載したのが、2000年。
2022年の1月末の今や、ウクライナで緊張が高まっている。恐ろしいほどに兵器が進歩した現在である。
小さな島国の一市民の私は、ただただ、外交による平和をねがうばかりである。つつましく俳句のこころの花火を上げるばかりである。
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