わたしの代表句 2017

芭蕉が凡兆に「一世のうち秀逸三五あらん人は作者、十句に及ぶ人は名人なり」と語った言葉がある。

この言葉に対して、芥川龍之介は、

名人さへ一生を消磨した後、十句しか得られぬと云ふことになると、俳諧も亦閑事業ではない。しかも芭蕉の説によれば、つまりは「生涯の道の草」である! 

                   

と『芭蕉雑記』に述べる。

そうか、生涯の道の草であるから、なるほど吟行は道草の風情である。

ときどき、「あなたの代表句を十句」と求められる。

掲載は光栄なことであるが、十句は緊張する数である。

先日、わたしが角川の「現代俳人名鑑」に掲載した十句は以下である。

  濡燕玉砂利深くなりゆくも     『螢の木』

  十月の柳の下に櫂ひとつ      『螢の木』

  城壁に薔薇の実紅く人とゐる    『螢の木』 

  月の海乳張る胸のしびれけり    『あかり』

  白梅や生れきて乳を強く吸ひ    『あかり』

  まつすぐに汐風とほる茅の輪かな   『家族』

  露の玉強き光となつて消ゆ      『家族』

  あはうみの汀かがやく梅雨入かな   『家族』

  大切なもの見えてくる螢かな     『家族』 

  野葡萄のはや海のいろ空の色     「藍生」

この十句を超える俳句を、生涯の道草をしながら書きすすめよう!

          ☆

          ☆

   

          ☆

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です